『夜と霧』

 第二次世界大戦(1935年〜1945年)における戦死その他の犠牲者数

国名 戦死者 負傷者 一般市民の死者および行方不明者
オーストリア 220,000人 300,000人 125,000人
中国 1,500,000人 2,000,000人 膨大にして計量不可能
フランス 245,000人 390,000人 152,000人
ドイツ 3,000,000人 2,000,000人 800,000人
日本 2,565,898人 326,000人 600,000人
ポーランド 550,000人 320,000人 5,000,000人
イギリス 403,195人 369,267人 60,359人
アメリカ 520,433人 668,653人
ソビエト 4,500,000人 5,000,000人 6,000,000人
ユーゴスラビア 1,706,000人 不明 膨大

                                                          (V.Eフランクル 夜と霧 序章より)

                   

信じ難い数字である。戦争の悲劇により、たった10年間で膨大な尊い命が失われた。

『夜と霧』を改めて読んでみた。この本の原著は『一心理学者の強制収容所体験』という、そっけないタイトルの薄い本であった。著者はヴィクトル・E・フランクル。自らユダヤ人としてアウシュビッツ収容所に囚われ奇跡的に生還しえた体験記である。父、母、そして妻も強制収容所に送られ共々、命を奪われてしまった。ようやく手にした自由と深い失意の中で彼は『一心理学者の強制収容所体験』を九日間で口述筆記させた。そして発行したが売れなくて絶版になった。それを西ドイツに留学した、ある日本人が偶然、本屋で見つけた。その日本人は心理学者である霜山徳爾。彼が翻訳した本です。

戦争は本当に酷い。只、その一言しかない。そして人間は何と残虐になれるのだと。

ジェノサイドの本当の恐ろしさは一度に大量に殺戮される事で無く、その中に、一人一人の死が無い事なのだと。麻痺する恐ろしさ。この本を読んで何時も感じる事である。

頁をめくって読むに耐えない場面に遭遇し閉じてしまう時もある。しかし過去に起こった紛れも無い事実なのである。この本が訴えることに対しての解釈は人それぞれだが、まずは過去の事実を正面から直視すべきだ。もし自分が、その立場に置かれたら一体どうなってしまうのだろうか。生死を超えた極限の中でも精神を保ち、人間の本質を問い続けれた事。人間の持つ精神の強さに改めて驚嘆する。

 

 今は戦争無き平和な日々を切に願うばかりである。ただ人で、いれる為に。